筆者にとっての内省は、「自分の感情をとらえることをきっかけにして自分の理解を深めること」である。人間には様々な感情があるが、内省が必要なときというのは往々にしてネガティブな感情に悩まされていることが多い。
ポジティブな感情というのは扱いやすいので、わざわざ時間を設けて内省する必要をあまり感じない。大事なのはネガティブな感情の取り扱いだ。ネガティブな感情は悪いものではない。それと向き合うことによって人生は確実に前進する。
本記事の読者の方もご自身のネガティブな感情と向き合うことを課題と思われている方が多いと思う。それを前提に書き進めて行きたい。
感情の原因となる出来事と向き合う
ステップ3までの行程を経て、心身をリラックスさせることができていたら、取り扱い難いネガティブな感情でも冷静に向き合える状態になっているはずだ。
向き合いたい出来事が明確な場合
まず、向き合いたい出来事を想起してみる。その出来事は今日起きた嫌なことかもしれないし、過去のことかもしれない。遠い過去になるほどに記憶を呼び起こすことは難しいかもしれないが、時間をかけてできるだけ具体的にそのときの状況を頭の中に思い描いてみよう。
向き合いたい出来事を具体的に思い出すことができたら、その時にどんな感情を抱いていただろうか。感情を再燃させてみる。激しい感情であるほどに蓋をしたくなる思いが込み上げてくるだろうが、無理ない範囲でその感情を引き出しから奥から引っ張り出してみる。
原因が確かではない感情が先行している場合
「なぜか分からないけどモヤモヤする」「なんだか無性にイライラする」などのように、特定の原因がすぐに思いつかない場合もあると思う。その場合は、無理に思考して推測しまうと無関係な事象を原因として誤解してしまう恐れがある。
原因不明のネガティブな感情が先行する場合は、思考を手放してそのまま感情をしっかり感じることに集中するのがおすすめだ。
感情はどんな身体感覚になっているか
ステップ3までに準備した身体を観察する状態になれていれば、自分の感情がどのような身体感覚を引き起こしているかをすぐに察知できるはずだ。
感情というのは常に何らかの身体感覚を伴っている。イライラするときは頭が熱くなっていたり、悲しいときは胸が締め付けられたり、恐怖を感じているときは手足に力が入らなかったり。
できるだけ感情に振り回されずに、眉間の先の一点に集中して、身体の不快感や違和感を感じる部分を特定する。取り扱いたい感情が大きいほどに、特定することは容易だろう。特定ができたら明確に分かるはずだ。「あぁ、これだ。自分が向き合うべき感情は、これに違いない」と。
身体感覚のとらえ方の例
「身体感覚としての感情」あるいは「感情としての身体感覚」、どちらでも構わないが、感覚を感覚のまま取り扱うことに難しさを感じる人もいるかと思う。
その場合は、何らかの言語化をほどこすのも適切な手段だ。例えば、「胸の辺りを誰かに押さえつけられるような感覚」とか、「恥ずかしさのあまり赤面してこの場から去ってしまいたい衝動」とか、「罪悪感で指先から力が抜けて体がしぼんでいく感覚」とか。
ただ単に「怒り」とか「悲しみ」とか、情報量の少ないラベリングをするよりも、上記のような身体感覚と結びつけた表現で言語化することで、一層感情を感じやすくなるはずだ。「確かに、感情とは身体感覚である」と納得していただけると思う。
感情はエネルギーだ。エネルギーである感情は、感じ切ってしまいさえすれば消えてくれる。どれだけいたたまれない感情であったとしても、例外はない。大丈夫。安心してほしい。どれだけ苦しくても、その先に未来はある。
感情が宿る部位を特定することができたら、実際に感情を感じとってみよう。技術的に難しいステップはすでにクリアしている。ここからは、精神的に難易度の高いプロセスになるだろう。次の記事でその方法をナビゲートしていきたい。