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執筆者の写真中村義之

【内省の手引き】#005 ステップ2 身体観察の準備

これは筆者の癖でしかないのかもしれないが、日常的についつい思考過多になっている。もう少し具体的に言うと、頭部の筋肉に緊張感を持っていることが多い。現代の情報社会では、常に何らかの思考を刺激する情報やコンテンツに溢れているので、共感いただける方は多いのではないだろうか。


内省をする際は、感情という身体現象に着目することが大事だ。身体感覚をとらえる感性を開くためには、できる限り「思考」に意識のリソースを割かない方がいい。頭部の緊張を緩めて、意識を「思考」ではなく「身体」にフォーカスすると、身体感覚を明瞭に観察するための準備が整う。


ここで紹介する身体感覚への意識の集中方法は、瞑想の実践を通して体得した技法だ。文章を読んでもイメージが困難な場合は、瞑想を習慣化するといいと思う。



身体観察の準備


表情筋を緩める


頭部の緊張を取ると言っても中々想像しづらいかもしれない。取り組みやすくするために、まずは表情筋を緩めるところから始めてみるといい。


どんなふうにしてもよいので、グッと表情筋に力を入れてみる。クイッと口角を上げて満面の笑みをつくってみたり、目を思いっきり瞑って顔のパーツを全て中央に寄せるように力を入れてみたり。


表情筋に力を入れて、一気に脱力する。すると、顔の筋肉がダラっと下に下がってくるのを感じられると思う。試してみて実感が薄い人は、筋肉が凝ってしまっている可能性があるので、何度か繰り返してみよう。


同時に、両肩をすくませるように持ち上げた状態で数秒維持してから、一気に落としてみる。肩から首、頭部にかけて力を抜く。自分なりにリラックスする方法をお持ちなら、それらを併用してみるのもいい。



意識をカラダ全体に向ける技


ここからの技法が非常に重要になる。そして残念なことに言葉で説明することが極めて難しい。頭で理解するよりも実践で体得するしかないものだが、換言すれば、体得さえしてしまえば言葉による説明がナンセンスに思えるだろう。まさに自転車の乗り方のようなものだ。


全体の流れは下記の通り。


  • 半眼の状態をつくる

  • 眉間の1cm前方に意識の集中点をつくる

  • 集中点を起点にしてカラダ内部に意識を向ける



半眼の状態をつくる


半眼(はんがん)という言葉をご存知だろうか。坐禅や瞑想の姿勢をつくるときに用いられる言葉で、目を半分だけ開けた状態を指す。


目を半分だけ開くとは、半分閉じるということなので、自然に視点が下方に向く。その自然と下がった角度の視点を維持する。座る姿勢や座高にも寄るだろうが、概ね1〜1.5m先のあたり。寝室で横になった仰向けの場合は、真上の天井方面からやや下方に視点が行くと思う。


眉間の1cm前方に意識の集中点をつくる


半眼の状態をつくれたら、眉間の辺りに意識を集中する。このとき気をつけたいのが、眉間に皺を寄せないこと。顔の表情筋は脱力したままだ。筋肉には力を入れずに、意識だけを両の眉の間、少し骨の窪んだ部分に集中する。


眉間に意識を集中することができたら、頭部の血流がその一点に流れ込む様子をイメージする。もちろん、実際にそこに血が流れ込むわけではない。血流をイメージしたくない人は、気の流れが集まってくるイメージでもいい。


次に、眉間のその一点から、イメージ上の血流や気の流れが前方に放出されるように意識する。頭部の緊張のみならず、体全身の力を抜いて、意識の力で気の流れを眉間から前方に放出してみる。力は入れない。ただ、意識だけでそのような仮想的現象を生み出してみる。


最初はうまくイメージできないかもしれない。うまくできているか否かの判断基準としては、眉間から実際に風が吹き抜けていくかのような爽快感を感じられたら上出来だ。


カラダ全身の力を抜き、眉間の先から気を放出するイメージができたら、放出口のすぐ先、眉間から1cmほど前方の空間に意識を定める。



カラダ内部に観察する意識を向ける


眉間の先の一点に意識を集中することができたら、いよいよ身体感覚の観察に移行する。

眉間の先の一点から意識を逸らさずに、足のつま先の感覚を感じてみる。立ちか座りの状態であれば、つま先と靴や床が接触している感覚。寝ている場合はつま先の皮膚が空気に触れている感覚。実際に感じられるか試してみてほしい。


眉間の先の一点に意識を留めながら、身体感覚を感じるという行為を実感して頂けただろうか?眉間の先への意識が多少弱まったとしても構わない。しっかり固定されていれば強弱はあまり関係ない。


その感覚が掴めてきたら、足先から徐々に上へと感じるポイントをずらしていく。あたかもMRI検査をするかのように。体の足先から頭頂部にかけて、体の感覚を感じてみる。


頭頂部、手先、足先など、くまなく感覚を感じることができたら、今度は、体全身の感覚を同時に観察する。例えば、視界の一点ではなく、視界全体を満遍なくとらえるように。


うまくいかない場合は、蛇口に付けたホースのノズルから広角で水を飛ばすかのように感覚の焦点を広げてみよう。眉間の先の一点は、例えばノズルの引き金とみなしてみる。その引き金を引くと、体全身に水がかかることをイメージする。無数の細かな水滴が体に落ちてくる。その水滴一つ一つを感じ分けることはできないはずだ。偏りなく、全身でその水滴を受け止めている状態をイメージする。


それができたら、水を受けている体の表面から体の内部の空間へと感覚の意識を深めていく。皮膚に囲まれた体の内部の空間が確かに存在することを確認する。


ここまでの状態を再現することができたら、身体感覚としての感情、身体現象としての感情を明確に捉えることができるだろう。次の記事ではその方法について説明を進めていく。






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